藤井 大地
本会会長(近畿大学工学部教授)
本会は,宗教とか宗派の枠を超えて,ただ仏教を聞きたいという有志が立ち上げた会です.
本会で取り上げる『教行信証』は,親鸞の著作で,非常に難解とされていますが,私は,ここに宗教の支配から解放される道が示されているように思うのです.瓜生崇氏の著書『なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から』(法蔵館)にも書かれていますが,人間本来の自己とは,「迷い続ける自己」です.しかし,人間はその「迷い続ける自己」に耐えきれず,その救いを宗教に求めてしまう.そして,その宗教がカルト的であれば,そこに様々な問題を引き起こすわけです.親鸞は,この『教行信証』という書物で,そういう宗教が人間を支配するという問題をいかに乗り超えられるかを示しているように思うのです.
私たちは,普通に生活できている間は,宗教の必要性を感じません.したがって,宗教なんて信じない,自分は無宗教だという人が大半だと思います.しかし,人間は誰しも,老病死からは逃れられません.自由に生きると,一生独身として生きたとしても,最後は,孤独という耐えがたい苦しみが待っています.そして,そういう苦しみから逃れようとすれば,そこにカルト的宗教が待ち構えているわけです.
しかし,親鸞は,そういう人間を支配するような宗教から真に自由になる道を見出した.それこそ「浄土真宗」という教えだと思うわけです.そして,その真髄がこの『教行信証』という書物に書かれている.だからこそ,この『教行信証』に書かれている教えを聞き抜きたい.それが本会立ち上げの趣旨です.